溺愛王子様のつくり方
「あいつには悪いことしたと思ってる」



葉菜さんを想ってか、すこし切ない顔になる。

学くんは葉菜さんじゃなくて、あたしのことを好きでいてくれた。
それだけで充分に嬉しいし、幸せなのに。

学くんの頭の中に違う人がいることが嫌だなんて、いつからこんなに贅沢になってしまったのだろうか。

こんな感情、学くんにだけは知られたくない。

だから、婚姻届の話も今はしない。
葉菜さんから突きつけられたものだから。
葉菜さんのことで学くんになにか言ってしまいそうで怖い。

学くんに、嫌われたくないから。



「気づいたときに完全に葉菜への気持ちは、なくなってるから安心しろよ?」



すこし、暗い顔をしてるあたしに気がついたのかもしれない。

顔を覗き込んで、鼻にツンって指を当てる。



「俺が好きなのは、あの時も今もちとせだから」



ゆらりと近づいてくる顔に自然と瞳が閉じる。

唇に感じた温もりに。
もう離れないと誓った。

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