溺愛王子様のつくり方
「婚姻届ってなんだ?」


「あ……」



社長にとっては、もう出されてるはずの婚姻届。
まだこのことは、学くんにも話していない。



「あー……っと、父さんいるのめんどくさいな」


「お前、なんだそれ」


「とにかく、いまは割り込まないで話をさせてくれよ」


「わかったから、話せ」



渋々という感じで、タマに続きを促す。



「あの紙の名前をみたとき、まだちとせの顔見えてなかったからさ。名前みてびっくりしたんだ。学とちとせの名前だったから」



自分にとっての弟と妹の名前なわけだもんね。
びっくりしないわけがない。



「でもさ、あそこで俺とちとせが会うってことがすごくて」


「すごい……?」


たしかに実の兄であるタマに会うなんて、そうそうないことだろう。
でも、タマの言い方はもっと深いところにある気がする。

それに、社長もさっき言ってたし。
何かがあるのだと、あたしにもわかる。

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