溺愛王子様のつくり方
「ちとせ、今にも泣きそう」



横に座る学くんがあたしの頬をつねる。



「やめてよー」



泣き笑いのような表情になってしまう。



「で、本題に戻るけど。どうして出してなかった?」



テーブルの上の婚姻届を人差し指でコンコンと叩く。



「復讐のつもりだったから」


「で?会社のパーティで発表して本当は結婚してなかったら、社長である俺が恥をかくからってわけ?」


「違う」



お父さんが学くんのことを真剣な瞳でみつめる。
学くんも真剣な瞳で見つめ返して、ゆっくりと首を横に振る。



「じゃあなんだよ」



タマがイライラしたように息を吐く。



「復讐だって分かったら、ちとせが結婚なんてしたくなくなるはずだから」



1度、頷いてからあたしをみつめる。



「あたしが……?」


「いつでもお前が俺から逃げられるように」



「え……?」



学くんの言葉にあたしの目線は婚姻届へと移る。

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