溺愛王子様のつくり方
「まったく……不器用なんだから」



立ち上がったタマがクシャッと学くんの頭を撫でる。



「やめろよ、もう子供じゃねぇんだから」


「いーや、子供のときもさせてくれなかったからな」



なんで言って、タマは何度も何度も学くんの頭を撫でる。



「やめろって、環。俺もう大人だし!」



タマの手を振りほどきながらも、どこか嬉しそうな学くん。



「たまにはお兄ちゃんって呼んでみるか?」


「呼ばねーよ!バカ!」



ずっと〝環〟と呼んできた学くんにとって、今更〝お兄ちゃん〟だなんて恥ずかしくないわけがないだろう。
呼ぼうと思っても呼べないものだと思う。



「ちとせ」



学くんの頭をひたすら撫でていたタマがあたしに向き直る。



「ん?」


「ちとせがすげぇ小さくてまだ母さんが入院してた頃」


「うん」


「病院で学に会ったときにな……「バカ、それ言うなよ!」



言葉を途中で遮って、タマの口に手を当てる学くん。

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