溺愛王子様のつくり方
「ま、待って!」


「なんだよ……そんなに俺に襲われたい?いま最強にイライラしてんの」



言葉の通り、上着をもつ学くんの手は固く握られていた。
上着がなかったら、手のひらに爪のあとがつきそう。



「あたし、なにかしたかな?」


「いや、なにも。感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」



にっこりと笑うその顔。
笑っているのに笑ってないようにしか感じられなくて。



「あたしはっ!学くんのことが好きだから!ほかの人なん……むぐっ「俺のこと好きなんて言うなよ!!!!」



〝ほかの人なんて好きにならない〟
そう言おうと口にした言葉は、学くんの手によって口が閉ざされた。

どうしてだろう。
好きな人のことを好きだと言えるチャンス。
もう会えないと思っていた人だから。



「ど……どうして」



学くんの手から解放された口を開いて、言葉を紡ぐ。



「俺なんて好きになってもいいことないから。やめとけよ」



そのまま壁によりかかるように座り込んだ。

< 20 / 189 >

この作品をシェア

pagetop