溺愛王子様のつくり方
『君は親御さんがいないんだったね?』


『はい。幼い頃に母は亡くなりまして、父とは結婚もしてなかったのでそれからは親戚の家で暮らしてましたが……』


『その親戚と折り合いが合わず、施設暮らし……だろ?』



社長の言葉にこくんと頷く。

ただただ、あの頃の嫌な思い出が蘇る。
母親の妹夫婦からのたび重なる暴力。

なぜか貧乏だったはずの母親には多額の貯金があった。
そのお金目当てに妹夫婦に引き取られたあたし。
居場所があってよかったと思ったのに、与えられたが現実はそんないいものではなかった。

目に見えるアザが増えていくあたしに、学校からの通報であたしは保護されて施設に入った。

施設に入っても、あたしの寂しさを埋めるものなんてなにもなかったけど。



『君がうちに入社してくれてよかったよ』


『……え?』



社長の言葉が理解できなくて、首を傾げる。



『入社試験の写真を見て、息子が君を気に入ったようでね』


『はぁ……』



社長の息子といえば、たしか副社長だ。

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