溺愛王子様のつくり方
「ありがとう」



あたしが助手席に乗ったのを確認し、ドアを閉める。



「シートベルトしろよ」


「うん」



あたしに声をかけなが、自分もシートベルトをする。

エンジンをかける姿ひとつでさえ、カッコいいなと思ってしまうあたしは重症なのかもしれない。



「家でいい?」


「うん」


「お腹すいたな」


「そうだね」



片手でハンドルを切る姿にドキドキしながらも、平然を装って答える。

そのうちぐーっと鳴りそうなくらい、お腹がすいている。
鳴らないで欲しいと願いながら、お腹をさする。



「お前、お腹なりそうなの?」



ちらっと横目に見ながら、フッと笑う。



「まぁ……」



そんなに分かりやすかっただろうか。
鳴ってないけど、鳴ってしまったような気になって恥ずかしくなる。



「家に帰ったらご飯にするから、そんな顔するなよ」



ハンドルを握ってないほうの手で、あたしの頭に軽く触れる。

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