溺愛王子様のつくり方
「なんもないよ。ほら、早く仕事戻った方がいいって」



すぐ近くに来ていることは知っている。
でも、学くんのことを見ると何を言ってしまうかわからない。



「おい、俺を見ろよ」



グイッと背もたれを持って椅子を回転させられて、すぐ目の前には学くんの顔。



「なんもないって……」



見つめることなんてできなくて、すぐにパッと目をそらす。



「なんなんだよ、お前」



チッと舌打ちをして、イライラしたように隣の椅子にドカっと座る。



「だから、なんも……「じゃあ、俺の目を見て言えよ!こんなんじゃ仕事に戻れねぇだろ!?」



言葉を遮って、あたしの腕を掴む。



「学くんにとってあたしはどうでもいい存在なんだから。放っておけばいいじゃない」



あまりあたしを期待させないでほしい。
どうして、あたしに構おうとするの。



「だからなんでそんなこと言うんだよ!?」



イライラしたようにあたしの両肩を掴む。



「痛い……。誰かきたら困るからとりあえず出てって……」



静かに学くんの手を外して、あたしは立ち上がる。



「くそっ……。絶対帰ったら何があったか吐かせるからな!」



苛立ちを隠せない雰囲気で、そのままバンっとドアを開けて出ていく。

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