溺愛王子様のつくり方
〝もうすぐ着く〟

時刻は18時ちょっと前。
学くんがメッセージをくれたから、あたしもホテルの前で待ってみようとエントランスを抜けて外に出る。



「あれ?」



声と視線を感じ、聞こえた方向に目をやる。



「……っ」



見た瞬間、見なければよかったと後悔をした。

大学生のとき、好きだなと思ったひと。
1年間くらいつきあってた。



「ちとせ……だよね?」



あのころのことなんて、水に流したかのように爽やかそうに笑ってあたしに近づいてくる。
隣の女の人の肩を抱いて。



「人、待ってるので」



あたしは彼から視線を外して、学くんを待つ。



「へぇ。その格好は誰かの結婚式?」



あたしの態度も気にすることなく、変わらずに彼は話かけてくる。



「関係ないです」


「えー?そう?まぁ、いっかー。俺ね、彼女と結婚するんだよ」



隣にいる彼女は、くすくすと笑ってあたしを見てる。

彼女はあたしを知っている。
だって、同じサークル内であたしから彼を奪っていったから。

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