溺愛王子様のつくり方
さぞかしいい気分だろう。

自分が勝ったのだから。
彼を手に入れて、そして結婚まで行き着いて。

でも、あたしだって……。



「ちとせ、待たせたね」



二人から逃れたくて、俯くあたしの肩をふわりと後から包み込まれた。
優しい声で。



「学くん……」



学くんの顔を見て、堪えていた涙が出そうだった。
でも、絶対にこの二人の前では泣きたくなかった。



「俺たちも結婚したんだよ」



学くんはあたしを自分の腕の中へと包み込んだ。
〝泣いてももう見えないよ〟ってコソッと言ってくれた。

その優しさが嬉しくて、あたしは学くんの腕の中で涙を流した。



「君たちが浮気してくれたから、俺たちが結婚できたんだ。ちとせ共々、君たちには感謝しかないよ」



どうしてなのだろう。
あたしはこの二人のことを学くんに言ったことがない。

高校時代の話ならわかるが、学くんと一切関わってない大学時代の話だ。

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