溺愛王子様のつくり方
「あー!疲れた!」


用意されたホテルの部屋に着くなり、学くんがネクタイを緩めてベッドに座る。



「お疲れ様」



あたしは冷蔵庫にあるミネラルウォーターをコップに入れて、学くんに差し出す。



「さんきゅ……ってお前も疲れたろ、慣れない場所で」


「まぁね……でも学くんがいてくれたから」


「俺はいいんだよ。小さい頃から慣れてる」



幼いころから人に見られて生きてきたんだろう。
あたしとは全然住む世界が違うひと。
なるべく人へのに見られないように生きてきたあたしとは全然違う。



「来いよ」



ベッドの前に立っているあたしをグイッと引っ張ってベッドの上に座らせる。

すごい近くで、学くんの見つめあってる。



「ちとせ、これでもう逃れられないぞ」


「……わかってる」


「おいで」



優しく微笑んであたしに向かって両手を広げる。


あたしのことがすきじゃないくせに。
この人は夫として、あたしを見ようとしてる。

それならば、あたしはそれに乗るだけだ。

そこに愛がなくたって。

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