溺愛王子様のつくり方
お披露目会の日は、ホテルで寝たから。
はじめてキングサイズのベッドで寝たのは、その次の日。



『なんもしねぇから』



後ろからぎゅっと抱きしめる。



『別にいいのに』



あたしの言葉にしかめっ面になる学くん。



『簡単にそういうこというなよ』



ボンッと枕を顔に乗せられる。



『だって……夫婦なのに』


『俺はいいんだよ。男なんだから。でも自分の体は大事にしたうがいいぞ』



最初は優しさかなのかなって思った。
でも……。




『お前に、手なんか出せねぇよ』



その言葉の真意は大切だからではなくて。
あたしに魅力がないから……?

だって、現に学くんは……。
あの人といま一緒にいるんだ。

もしかしたら仕事でイライラして、薬を飲む代わりに呼び出したのかもしれない。
ふたりは、美男美女でとってもお似合いだったもん。



──……あたしを使ってよ。

あの言葉は本心なのに。
どうして、妻であるあたしは頼りにしてもらえないんだろう。
どうしてこういう時に頼りにするのは、ほかの女の人なんだろう。

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