溺愛王子様のつくり方
「学くん……ご飯……」



用意しているご飯について告げようと、寝室のドアを開ける。

ふと、スマホの画面をとても悩ましい表情で見ている学くんに言葉が詰まる。



「どうした?」



あたしに気づいた学くんは、スマホから顔を上げて作ったような笑顔になる。

……なにかがおかしい。
今日の学くんはいつもの学くんとは違う。

ほかの女の人と一緒だったから、罪悪感を感じてるのだろうか。



「ちとせ?」



「あ、あのね……ご飯なんだけど……「食べてきたからいい。これからは俺の分作らなくてもいいから」



ハッと我にかえって、発した言葉を遮って学くんの言葉が続く。



「あ、そうか……うん、わかった」



なんだかこみ上げてくるものがあって、そのまま背を向けて寝室のドアをしめる。



「俺が遅い時は作って待っててって言ったくせに……」



学くんの手作りご飯を作ったあの日。
学くんが言ってた言葉だ。

その言葉の通りいままでやってきて、学くんも、何も言ってなかった。

< 62 / 189 >

この作品をシェア

pagetop