溺愛王子様のつくり方
「あの……学くん、その人は」



燿くんも焦ってるようだし、話題を変えるべく隣の女性へと視線を移す。

知りたくなんてないけど。
変える話題が他に見つからなかった。



「ねぇ、学。この人の結婚したの?」


「あぁ、そうだよ。紹介するね、妻のちとせだ」



学くんに絡めていた彼女の腕をほどき、あたしの隣へと歩いてくる。

〝学〟
そう呼んだ彼女が親しみが込められている気がして、胸ちくんとなる。

あたしは呼び捨てなんてできない。



「ちとせ、昨日アメリカから戻ってきた高藤葉菜さん。Tコーポレーションの社長の娘だ」



あたしにも向かいに立つ彼女を紹介してくれる。



「はじめまして、妻のちとせで……「あら、元恋人だって言えばいいじゃない」



ペコッと下げようとした頭は途中で止まる。



「はぁ……、お前は本当にハッキリしてるな」


「隠し事が苦手なだけよ」



ため息をつきながらもどこか嬉しそうな学くん。

< 68 / 189 >

この作品をシェア

pagetop