溺愛王子様のつくり方
「いいのかよ、あれで」


「言いたくないなら言わなくていいよ」



そう。
隠したいなら隠せばいい。



「見てらんねぇな、ほんと」



グイっとあたしを引き寄せる。



「よ、燿くん……」


「俺の前で我慢すんなよ。溜め込むな」


「……っ」



燿くんの優しい言葉に胸のなかに溜まってる渦が無くなっていく気分になる。



「泣きたいなら泣けよ。俺が受け止めてやる」



あたしを抱きしめながら、ポンポンっと頭を優しく撫でてくれる。



「燿、くん……」



ポロポロと流れてくる涙。

昨日も泣いたはずなのに。
まだ出てくる涙。



「どうせ昨日も泣いたんだろ?」


「うん……」


「人にも見せろ。そういうとこ。一人で泣くな。俺が受け止めてやるから」



燿くんの言葉のひとつひとつが暖かくて。
涙がとめどなく出てくる。



「泣いたら、仕事がんばれ。そして、また泣きたくなったら電話してこいよ」


「……うん」



高校の時も、大学の時も、そして今も。
変わらない優しさを持つ燿くんに心が暖かくなった。

一人じゃなくてよかった。

愛のない結婚生活だけど。
見守ってくれる人がいるあたしはまだ幸せなほうだ。

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