溺愛王子様のつくり方
あたしはそんな二人のやり取りを気に留めないように作ったご飯にラップをかけたりして、リビングから離れる。

キッチンで洗い物をしていれば、ふたりの会話も聞こえにくくなる。

現実から目を背けるように、あたしは蛇口から水を出した。

食べ損ねたご飯も流石に今日は喉を通らなそう。
明日の朝ごはんにしようと決める。



「ちとせ」



洗い物をしているとふわっと後から抱きしめられる。



「へ?」



突然の出来事に洗い物をしている手が止まってしまう。



「洗い物なんて食洗機に入れとけよ」



そう言ってテキパキとシンクに置いてあった食器を食洗機のなかに入れていく。



「ほら、手拭けよ」



上から布巾を取り出して、あたしの手に乗せる。



「う、うん」



突然の出来事に頭がついていかないながらも、布巾で手を拭く。



「ほら、行くぞ」



あたしの手から布巾を奪って、キッチンに置いたかと思うとあたしの手を握って歩き出す。

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