溺愛王子様のつくり方

突きつけられたモノ

「ねぇ」



朝。
身支度をしていたあたしを後ろから可愛い声が呼び止める。



「はい?」



学くんは、重役会議があるからと早くに出てしまい家には葉菜さんとふたりきり。

学くんが家を出るところにあたしも起きて、顔を合わせたのだけど彼は普通だった。

普通すぎるくらいに普通で。

あぁ、これ
──距離を置かれてる。

このことに気づくまでに時間はかからなかった。

本当なら、なぜあのまま部屋にこなかったのか。
あたしが隣にいないと寝れないのではないか。
本当に仕事をしていたのか。

聞きたいことは山ほどあった。
でも、何も聞くなと言われてるような瞳に逆らうことはできなかった。

昨日の夜、トイレにいったあたし。
学くんの書斎の前を通ったけど、書斎に人の気配はなく。
反対にあたしたちの隣の客間からは二人の笑い声が聞こえてきたんだ。

同じ家にいるのに1人を感じて。
すぐに布団にはいって目を閉じた。

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