溺愛王子様のつくり方
──ピリリリ



天井を見上げていると鳴り響くあたしのスマホの音。



「あ……」



力なく声を漏らすけど、そのには自分ひとり。
応えてくれるものはなにもない。



「仕事……」



あまりの衝撃に時間を忘れていたけど、始業時間はとっくに過ぎている。

このままどこかに逃げ出してしまいたかった。
でも、仕事をサボるなんてそんなの社会人としてやってはいけないことだ。



「もしもし」



相手も確認せず、静かに電話をとる。



『ちとせ?まだ来てないみたいだけど、なにかあったのか?』



聞こえてきたのは心配そうな燿くんの声。

燿くんは毎日仮眠を取ってから仕事をするから、いつものように医務室にやってきたのだろう。



「よ、くん……」



燿くんの声をきいた途端、瞳から生暖かいものが流てくる。



『ちとせ!?』



あたしが泣いてることに気がついたのだろう。
燿くんが焦ったようにあたしの名前を呼ぶ。

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