溺愛王子様のつくり方
「そんなの許すわけねーだろ」



俺の腕を掴んで睨みつける。



「じゃあ、ちゃんと幸せにしてやってくださいよ!」


「わかってるよ……」



副社長はそのまま、俺に背を向けて歩き出した。



「家に帰ってもいねーけどな」



ちとせはもうあの家を出た。
帰ったら誰もいない家にあいつは驚くのだろう。
あいつは、今日ちとせが会社に行ってないことも知らない様子だった。

本当にちとせのこと見てるんだろうか。
だいたいなんで婚姻届は出されてなかったのか。

そんなことをする必要がどこにあるのか。

俺らが高校の時だってそうだ。
教育実習生だったあいつは、この期間が終わったらちゃんとしようとちとせと約束をしておいて、最後の日に学校にこなかった。

あの時、ちとせがすごく泣いていたのに俺は抱きしめることしかできなくて。
何も出来ない自分がもどかしかった。

だから、もしいま傷つけようとしてるなら。
俺が守りたい。

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