次期社長の溺愛が凄すぎます!
『ところで麻衣子?』

しばらく無言で考えていたのに、のんびりとした声がかかる。

藤宮さんは気長につきあってくれたらしい。

「ご、ごめんなさい。何ですか?」

『明日、20時15分に帰国する』

「あ。そうなんですか。大変ですね。あれ?」

日本とロスって時差を考えたら、飛行機は真夜中に出発?

いやいや、それはないでしょ。

『本来なら、ロスから直接帰国する予定だったんだが、実は今はニューヨークなんだ』

ああ、そうなんだ。ニューヨークからなら、確か12時間か13時間くらいの差。

だけど、時間の感覚がめちゃくちゃになりそうだよね。

「身体大丈夫ですか?」

こっそり水を飲みながら耳をすませると、今度は藤宮さんが黙り込んでしまった。

一拍置いてから、何かが割れたような音が聞こえて、ちょっと遠くから誰か他の人の声と、藤宮さんがそれに答えるやり取りが聞こえてきて……いったい何があった。

「藤宮さん?」

『すまない。グラスを落とした』

「大丈夫ですか? 慌てて拾うと指切りますから、やめておいた方がいいですよ」

『今、まさにそうしようとして、末松に止められたよ』

ちょっと困ったような声音に笑ってしまった。
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