次期社長の溺愛が凄すぎます!
魔法の効力は続きません
***


一応、「いい機会だから」と医師に勧められるまま、血圧以外の病気も調べるために数日検査入院となったうちの父さん。

最初はひとり部屋だったけど、母さんがベッド代がもったいないって言い始めて、すぐに空いた五階の四人部屋へ移った。

エレベーターを降りてナースステーションの前を通り過ぎ、廊下の突き当りの部屋を入って右手側、奥の窓際のベッドに今はいるはず。

どうせ父さんのことだから、横になってテレビでも見てるんだろうな。

そんなことを思いつつ、休日前のゴタゴタした仕事を終わらせて、お見舞いにやってきた。

手前にいる同室の患者さんたちに挨拶しながら部屋に入ると、カーテン向こう側、窓辺に何故か豪華なフルーツ入りのカゴが見える。

「あれー。誰かお見舞いに来て……」

そう言いながら近づいて、カーテンの影にいる人を見つけて固まる。

「おお。よく来たな、麻衣子」

数日前に倒れた人とは思えない、元気な声を上げるのは父さん。

「遅かったな。俺の方が早かったみたいだ」

そう言いって、微かに笑っているのは藤宮さんだ。

当然のように言っているけどね、普通におかしいよ。

赤の他人様であるあなたが、普通にうちの父親の病室に単独でいるのって、どう考えても変だから。

まぁ、そもそも藤宮さんは変だから、ここは気にしちゃいけないのかな。

目を細めて彼を見ながら小さく溜め息をついた。
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