次期社長の溺愛が凄すぎます!
「少しは浮上したようだな。気分はどうだ?」

優しい口調で言われた言葉に、私は無言で首を傾げる。

「泣いて、少しはスッキリしたか」

「……あ」

昔のあれこれを、泣いて気分がスッキリしたかと聞いているのか。

考えてみると、全くわだかまりがないわけじゃないけど、本当に昔の出来事のように遠くに感じる。

「涙にもいろいろとあるらしいが、多くは浄化作用があるんだそうだ。まぁ、感情の発露ではあるわけだよな」

そうなんだ。でも、そうかも。なんとなくわかる。

「……あの女性が、藤宮さんの元婚約者さん?」

思っていたことをすんなりと聞けて、自分でも驚いた。

泣いてスッキリしたついでに、昔の思い出話になってきているみたいだ。

「そう。驚いただろう?」

「運命の赤い糸で結ばれているって言っていましたね」

「両家の親が同席、弁護士立会いの下でもそう言っていたよ。他の男の子供を宿していながら、俺が運命の相手なんだと騒いでいた。彼女の思考の中では、接近禁止令も意味がなかったみたいだね。普通に近づいてくるから、どうしようかと思ったが。お嬢様育ちで、自分の言っていることが正しいと思いこむようなところがあっ たよ」
< 167 / 197 >

この作品をシェア

pagetop