次期社長の溺愛が凄すぎます!
***


終業時間。残業は絶対にしない勢いで仕事終わらせ、それでもいつも通りの時間に席を立つ。

「お疲れさまです」

挨拶をすると、書類から顔を上げた原部長が楽しそうに微笑む。

「今日も迎えに来ているのかい? 圭一とデートだろう?」

当然のようにプライベートな事を言う原部長に、少しだけ悪戯心が動いた。

「違うって申し上げたらどうなるでしょう?」

「うちの親族から犯罪者は出したくないんだけど」

もうすでに近いものがある気がしないでもない。

でも、受け入れている時点で問題にはならないだろう。

「そこは大丈夫だと思いますよ」

冷静を装って笑いながら総務部を出ると、ドキドキとして社員入口へと向かう。

サプライズをされるのは藤宮さんのおかげで慣れてきたけど、自分がサプライズをしかける側になるのは初めてだ。

足早に廊下を歩きながら、途中で化粧室に寄ってメイクを軽く直す。

いつも通りでいればいいの。いつも通り。

鏡を見ながら暗示をかけるように念じて、それから深呼吸する。

よし。頑張ろう!

そうやって表面上は穏やかに、すれ違う人たちと挨拶を交わしながら社員入口まで来て、役員秘書さんに困った顔をされている藤宮さんを見つけた。
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