次期社長の溺愛が凄すぎます!
***


高層ホテルの四十階。モダンな雰囲気の店内に入ると、少しだけ気後れする。

窓際の夜景が見えるソファーの席に案内されると、そこから見える景色を楽しむふりをしながら、冷や汗が流れてきた。

「……藤宮さん。ここってけっこう有名なフレンチレストランですよね?」

「そうだね。確か三ツ星を獲ってるんじゃないのかな。去年は祖父と来たんだ。今年もどうぞという手紙が来ていたし、頼みごともしやすいから選んだんだが――」

私の緊張した様子に気がついたみたいで、朗らかに微笑んでくる。

「社交の場じゃないんだ。マナーをうるさく言う人もいないよ。人のテーブルを見るのはそれこそマナー違反だからね。大丈夫」

他人のテーブルを見るのはマナー違反か。

そりゃそうだよね、人のことジロジロとみるのはちょっと失礼だもん。

そう思ったら、このたくさんのカトラリーにも太刀打ちできそう。

「緊張している麻衣子に、いいことを教えてあげようか?」

そんなことを悪戯っぽく言うから、なんだろうと思って顔を上げ、楽しそうな藤宮さんの顔を眺める。

「マナーは大事だけど、一番大事なのはおいしく食べてあげることだよ。店の人間ならおいしそうに食べてくれる客が嬉しい。後は騒いだり迷惑をかけなければいいだけ。簡単だろ?」

おいしく食べる……。
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