次期社長の溺愛が凄すぎます!
低められた言葉の意味が、じわりと思考に刻み込まれていく。

目の前のジャケットをギュッと掴んで顔を上げると、彼の視線と私の視線が絡み合った。

無表情は藤宮さんの標準装備。でも、よく見ると彼の眼の中に感情が現れる。

藤宮さんの視線はいつも真っ直ぐ。

じっとただひたすらに私を見ている黒い瞳が、ふっと和らいだ。

「怖いなら……」

そう言って離れようとするから、追うように寄り添うと、彼の手がするりと背中を下りていく。

「途中で、やめてあげられないが」

その言葉にただ頷いて、目をつぶると唇が塞がれた。

最初は軽く、触れ合わせるように。

それから次第に角度を変えられて深められていく。

初めてのことは誰だって怖い。

だけど、辿る指先の温もりはとても優しい。

徐々に高められていく熱に戸惑いを隠せずにいると、小さく名前を呼ばれて安堵する。

そして次第に頭の中はぐちゃぐちゃになって、思考なんてしろものは、いつの間にか霧散して消えていった。


「……あっ、ぅ」

痛みに顔をしかめると、するりと頬を撫でていく彼の手の感触。

「息をして、麻衣子」

いつの間にか詰めていた息を吐き出して、手を伸ばすと抱きしめられた。

「怖いなら、掴まれ」

目を開けると、熱を孕んだ彼の瞳が見えた。

怖いくらいに真剣で真っ直ぐな目に、恥ずかしくなって視線を逃す。

「ああ……っ!」

押し寄せる波にさらわれながら、必死に掴んでいた背中に爪痕を残した。









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