次期社長の溺愛が凄すぎます!
カボチャの馬車はないですが
***


藤宮さんは、過去のことは全く気にならないみたいだ。

研修は総務部内でのことだから、廊下ですれ違っては挨拶を交わす程度だけど、普通に声をかけられる。

まぁ、それが社会人で、暗黙のルールってことだよね。

だいたい5年も前に終わったことで、私だってあんな夢さえ見なければ忘れていたはず。

私と藤宮さんの間で直接何かがあったわけでもないんだし、無視をするとか大人気ない対応も子供じみているし。

研修が終われば自社に帰って、そうなったら親会社の重役と会うこともないだろうって思ったら普通にできる。


「おはようございます。研修最終日ですね、斎藤さん!」

考えながら資料をまとめていたら、できるキャリアウーマンそのものの、キラキラオーラを発している鶴川さんがそう言って席に座った。

席も隣で、実際の実務は彼女に教わっている。

「ここまでやり方が違うと、最初は送信が遅くなるような気がします」

「大丈夫ですよ。斎藤さん飲み込み早いし、まだ若いんだし」

バンバン背中を叩かれて、苦笑を返した。

「今日でひとつ年取りました。そんなに若くは……」

「え? 私は33だけど? 喧嘩売ってる?」

睫毛パチパチにこやかに言われて、ブンブン首を振る。

「で、いくつになったの?」

「えーと……27歳に、なりました」

「やっぱり喧嘩売ってるんだ! どうせ33で独身だよ~」

両手で顔を隠して泣き真似をする彼女に、首を傾げてみせた。
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