次期社長の溺愛が凄すぎます!
意味はわからないけど、彼がそう言うんだからそうなんだろう。

社員入口を出ると、目の前に黒い車が停まっていた。

中から男の人が出て来て、後部座席のドアを開けてくれながらニコリと微笑む。

「秘書の末松と申します。お見知りおきください」

「はぁ……よろしくお願いいたします」

お見知りおきしなくてもいいと思う。でも、挨拶を交わしたら、背中をそっと押された。

「先に乗ってくれ。吉田さんに追い付かれたくない」

「吉田さんに追われるんですか!?」

全然意味がわからないんだけど!?

ギョッとする私を、今度はぐいぐい後部座席に押し込む藤宮さんに、末松さんが呆れたような視線を送っている。

「部長。それじゃあまんま誘拐ですから。誰も追ってきていないですから安心なさってください」

「いいからお前も早く運転席に戻れ」

押し込まれて振り返ると、藤宮さんも乗り込んできて慌てたようにドアを閉める。

少し後に運転席に末松さんが乗ってきて、車が動き出した。

ラジオも付いていない車内に沈黙が充満する。

全く理解できないけど、これってもしかして……。

「私、拉致されてるんでしょうか?」

その小さな呟きに、末松さんが吹き出した。
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