次期社長の溺愛が凄すぎます!
ミニチュアの英国風の前庭に囲まれた白亜の洋館。

大きな格子窓の奥には、食事をしている人たちが見えるから、恐らくレストランなんだろう。

「レストラン……ですよね?」

「ああ。予約しておいた。なかなか美味しいシーフードが食べられる。シーフードは大丈夫か?」

淡々と呟く藤宮さんの手に引かれ、庭を横切っていく。

「大丈夫ですけど。いきなりこんなところに連れてこられたら驚きます」

「何がだ? 食事に誘った記憶があるんだが」

その通りでございます。

ただね、普通の一般市民が会社の帰りにご飯を誘われたら、どこぞの居酒屋か、ちょっとした飲食店に連れてこられるもんだと思うんだ。

こんな立派なレストランではなくて。

「私、仕事帰りのスーツ姿なんですが」

「大丈夫だ。俺もスーツ姿だから」

男の人はいいだろう。だけど、女はお洒落して来た方が、好ましい場所なんじゃ?

ドアを潜ると、黒服の男の人が近づいてきた。

完璧な笑顔からは“いらっしゃいませ”と歓迎を示してくれている。

「お待ちしておりました、藤宮様。コートをお預かりします」

そう言われて、一瞬拒否しそうになる。

それでも騒いだら目立つから、渋々コートを預けて、案内されるままに窓際の席についた。
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