次期社長の溺愛が凄すぎます!
席と席が離れていて、観葉植物が絶妙な具合に配置されている。

人の視線に晒されないことにホッとしていたら、目の前に座った藤宮さんが小さく笑った。

「ここも緊張するか?」

「しますよ。自慢じゃないですが、こういうグレードの店には来たことありません」

「覚えておこう。ワインは飲めるか?」

黒服の人からワインリストを手渡されて、藤宮さんがそれに目を通している。

だけどすぐに閉じてしまうと、いつもの無表情で黒服の人を見つめた。

「1991年物で、口当たりのいいワインがあればお願いしたい。彼女の誕生日なんだ」

その言葉に黒服の人は嬉しそうな表情で私を振り向く。

「おめでとうございます。当店をお祝いの場所にお選びくださいましてありがとうございます。よろしければお任せください」

「……ありがとうございます。よろしくお願します」

実際に店を選んだのは藤宮さん。でも、家族以外の人からの、お祝いの言葉はちょっと恥ずかしいけど素直に嬉しい。

なんとなく照れているうちに、グラスにワインを注がれて、藤宮さんがグラスを掲げた。

「誕生日おめでとう。麻衣子」

「ありがとうございます」

カチンとグラスを合わせてワインを一口含んだ。

フルーティーでえぐみは少ない。ほのかに甘いワインに目を輝かせる。
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