次期社長の溺愛が凄すぎます!
「おいしい」

「それはよかった。俺はあまりワインに詳しくないから、ソムリエに頼んで正解だったかな」

藤宮さんはふっと優しく目を細めて笑う。それを見ながら不思議とリラックスできた。

「それにしても、よく誕生日まで覚えていましたね。きっと調査されたんでしょうけど、あまり他人の誕生日なんて覚えないでしょう?」

私なんて、家族と友達以外の誕生日なんて覚えていない。

身近であれば聞いても忘れてしまうものだと思う。

だけど、藤宮さんは微かに視線を落として自嘲した。

「最初は、君の年齢を見て巻き込むべきかどうか迷ったからな。22歳の若いお嬢さんには酷な話だ。記憶するまで読み込んで……忘れられなかった」

それから視線を上げ、私を真っ直ぐに見つめ返してくる。

「ずっと忘れたことはなかったな。あれから、どうしていたんだ?」

ずっと? ずっとって、あれからかなり経っているじゃない。

「もう5年も前の話ですよ? だいたい、どうして今さら……」

「当時にフォローしたかったが、吉田さんに、君のところに行くのを止められていた。君に対する態度を叱られた」

ああ。それで今日は吉田さんから逃げたのか。

さっきの行動の謎が解けて、思わず吹き出してしまった。
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