次期社長の溺愛が凄すぎます!
「少し酔ったか?」

「うーん。そうかもしれません。普段はあまり飲まないですから。実家に帰ると、工場のおじさんたちに捕まって酒盛りになりますが」

「ああ。本当に会社の人たちに可愛がられているんだな。子供の頃の話がどんどん出て来て困惑したよ」

「あ! それは忘れてください。チャリで事故った話なんて、武勇伝にもなりませんから」

そう言いながら、たぶん私の幼い日々を藤宮さんに……というか、藤宮さんが雇った調査会社の人にリークしたのは父さんの会社のおっさん連中だろう。

いいけどね。もう済んだ話だし。

「藤宮さんの子供の頃はどうだったんですか? やんちゃ坊主でした?」

「どうだろうな。比較的おとなしい子だったんじゃないのか? 小さな頃から習い事はたくさんあった。こう見えてヴァイオリンが弾ける」

どこか得意そうにしている藤宮さんに、小さく吹き出してパタパタ顔の前で手を振った。

「こう見えてっていうか、まんまお坊っちゃんの習い事じゃないですか。実は藤宮さんが、ギターとかベース弾けるって言われたら驚きますけど」

「それは試したことがないな。意外性を求めるならドラムだろうか」

「楽器に意外性を求めるんです? ちなみに私はピアニカとリコーダーくらいしか、楽器に触ったことがありません」

「ああ。それはそれで普通だな」
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