次期社長の溺愛が凄すぎます!
***


よく晴れた日曜日。普段着のジーンズに白シャツを合わせて、その上にコートを羽織る。

金曜日はめちゃめちゃ楽しかったなぁ。

思い出しながら、身につけたペンダントのティアドロップを指先ではじき、実家の戸をガラガラと開けた。

木造平屋の昔ながらの日本家屋。まだ春には早いから、庭はこの時期閑散としてるけど、夏には鬱蒼とした森みたいになる。それに面して縁側があった。

ちらっと見るとすでに数人いるらしい。玄関の靴からすると五六人ってところかな。耳に聞こえるのは、おじさんの調子外れの歌声だ。

廊下からパタパタ音がして、スリッパ履きの母さんが出迎えてくれた。

「あら、遅かったわねぇ。もう始まっちゃってるわよ、あんたの誕生日会」

「まだ11時だし。てか、主役抜きで誕生日会とか言われてもなんなんだかなぁ」

「まぁまぁ、年がら年中、お酒を飲む口実を探しているようなものだから。とにかく、顔をだしてらっしゃい」

「はいはーい」

靴を脱いで揃えると、乱雑になった他人の靴も直して居間に向かう。

居間の奥が仏間になっているけど、今やそこは宴会場と化していた。

「あー! 麻衣子ちゃんじゃねぇか! 久しぶりだなぁ」

「またベッピンさんになって~。いつ嫁にいくんだぁ?」

「うっせー! まだ麻衣子ちゃんは嫁になんていかねぇぞコラァ!」

……あー。もう、すっかり出来上がってるね。
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