次期社長の溺愛が凄すぎます!
「忘れ物? 走らなくても、まだ課長も部長もいるから大丈夫……」

「違います! 主任が呼ばれてます!」

渡されたのは名刺だった。

そしてそこには【藤宮重工 経営戦略本部 部長 藤宮圭一】って、書いてある。

「え。藤宮部長が来てるの?」

「役員秘書が応接室でお待ちいただくように言っても、私用だからって、社員入口で主任を待っています!」

それはそれは、さぞかし目立っていることだろう。

「あの人はまた待ち伏せてるの? もうやだぁ、お客様の玄関から帰っていい?」

「そんなことしたら、来週から仕事にこれませんよ!」

「あ。それは困る。いくいく」

盛大に溜め息をついて社員入口に向かったら、困り顔の役員秘書、それからにこやかな末松さん、そして無表情の藤宮さんと……まわりに遠巻きにしているウチの職員たちがいた。

藤宮さんが私に気がついて片手を上げる。

「元気そうだな」

「ええ、まあ。藤宮部長もお元気そうで。ニューヨークからお戻りになったんですか」

「ああ。さっきな。本社に連絡したら、叔父に麻衣子から連絡が来ていたと言われたから」

藤宮さんの“麻衣子”呼びに、まわりの観客からはか細い悲鳴が上がった。

待って待って、君たち違うんだ。きっと君たちは勘違いをしている!
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