次期社長の溺愛が凄すぎます!
あ。これは目の前で作って食わせろとか言ってるの?

「さっきからからかってません?」

呆れた声を上げると、誠実そうな声音が返ってきた。

「いや。本気で言っているんだが。それがダメならやっぱり同席をお願いしたいな。洋服なら買えばいいだろ」

暗くて表情がわかりにくいのがイライラする。どんな顔で言ってるんだろう。それがものすごい気になるかも。

「本社の創業祝賀会なら、うちの役員がいますよね? そんな席に主任の私がいたら、ちょっと奇妙だと思います」

「そこは気にするなよ」

街灯が通りすぎて、一瞬だけハッキリと藤宮さんの表情が見える。

余裕たっぷりにニヤニヤ笑っていた。

こんな笑い方もするんだ。そう思うのと同時に、猛烈に腹が立ってくる。

「やっぱり藤宮さん、私のことをからかってるでしょ!」

「冗談は不得意だ。何故かいつも真顔で変なこと言うなと怒られる」

「そりゃそうでしょ! でも、今の笑い顔はしっかりからかってる顔してました!」

すると、藤宮さんが無言になる。

どうしたんだろうと首を傾げると、彼も首を傾げて呟いた。

「……笑っていたか?」

とても不思議そうに言われてキョトンとした。

自覚はなかったらしい。
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