次期社長の溺愛が凄すぎます!
奏斗は優しい人だった。ちょっと軽い人だなって、思わないわけじゃなかったけど、明るくて、楽しい人で……。

まさか二股とか、されてるなんて考えたこともなかった。

気がつけば、鼻の奥がつんと痛くなって、ポロポロと涙がこぼれ落ちてくる。


「あ……えっと、ごめんなさ……」

無言でハンカチを差し出されて、藤宮さんを見上げた。

同情するような視線と目が合うと、余計に涙は止まらなくて、どんどん流れて出ていってしまう。

「こういう時、泣いていいんだと思う。でも、浮気男のクズに流す涙は1度でいい」

何故か真顔でそう言われ、キョトンとして彼を見た。

真剣なその様子に瞬きする。

涙は引っ込んでしまったけど、それもそうかも、と、思ってしまった。

奏斗は初彼で、好きな人だったけど、最低な男には変わりない。

そんな人を思って悲しむのは、1度で十分だ。



それはもう、5年前のお話。私は目が覚めて、憂鬱な朝を迎えた。









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