次期社長の溺愛が凄すぎます!
船酔いはしませんけど
***


土曜日の記念祝賀会を終えて、藤宮さんと喧嘩するみたいに言い合いながら、帰りはちゃんと彼の車で送ってもらったのは20時頃。

緊張していないつもりでも、気がつけば緊張していたらしい。泥のように眠った翌朝、清々しいくらい気持ちよく目が覚める。

カーテンから差し込む光が強い。何時だろうと時計を見てギョッとした。

「うわぁ、もう10時じゃん」

日曜日だからって寝坊しすぎた。勢いよくベッドから降りて、今日は何をしようか考えながら歯磨きしていたら、スマホの着信音が鳴る。

一瞬だけ鳴って、すぐに消える着信音はメールの合図。

誰だろうと思って確認もせずにメールを見て、歯磨きしながら吹き出すところだった。

【映画を見に行こう。11時30分頃に迎えに行く】

簡潔な文面の主は藤宮さんだ。

とりあえず歯磨きは中断して口をゆすぐと、慌てて藤宮さんに連絡する。

コール音だけのスマホを睨み付け、二回、三回と通話を切っては、コール音を聞く動作を繰り返した。

あの男、出ないつもりだな。

ギリギリ歯ぎしりして通話を切ると、またメールが来た。

【断られそうだから、音声通話は出ない】

わかってるじゃないか。

目を細めてスマホを見つめ、返信画面を呼び出してお断りの文章を入れて送信する。

すると、数秒で返ってくるメール。

【11時半にはマンションの下にいる。下りてこないなら部屋まで迎えにいく。705だよな】

なんだか不毛だ……。
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