次期社長の溺愛が凄すぎます!
こうなったら面と向かって文句を言ってやろう。

急いでシャワーを浴びて、必要最低限の化粧をする。

御歳27歳。さすがに素っぴんで人様の前に行きにくいお年頃だ。化粧は断じて藤宮さんのためではない。

だけど、彼はかなり強引だし、下手な格好だとそのまま連れ出されそうだよね。

考えた末に、着古したデニムパンツにブカブカのセーターを着ると、その上にストールを羽織ってスニーカーを履く。

このいかにもご近所に行く姿では、つれ回せまい。

クリーニング予定のスーツと財布を手に持つと、部屋のドアを勢いよく開けた。

「おっと……」

低い声は聞き覚えがある。

目の前には黒いスニーカー。ちょっと視線を上げると、こなれた雰囲気のインディゴブルージーンズ。

グレイのVネックのセーターに、白いTシャツ。

「なんだ、似たような格好だな」

爽やかに微笑む藤宮さんがいて、ドアを閉めようとしたら、ガツンと何かに引っ掛かって閉められなかった。

「足、足をどけてください!」

「どけたら閉めるだろ。お前なら平気で俺を閉め出しそうだ」

「わかってるじゃないですか。いい子だからこの足を引っ込めて‼」

「いい子になるつもりはない。大いに悪い子になるつもりなんだ、それにしても日本のドアはどうして外開きなんだろうな。防犯としては内開きの方が閉めやすいだろうに」

そんなもん知るか~!
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