次期社長の溺愛が凄すぎます!
大きく息を吐き出すと、藤宮さんの後ろについていく。

鍵もスーツも拉致られた。

これは仕方がないと割り切るべきか、それとも背後を襲って強奪すべきか。

常識的には仕方がないと割り切るべきなんだよね。

でも、この無防備な後頭部を殴ったら、さぞ気分は爽快だろう。

悪いことを考えていたら、ふいっと振り返られて視線を逸らす。

藤宮さんは無言のまま、ジロジロと顔を見てきたから眉を寄せた。

「何ですか? 何かついています?」

「いや。職場と違ってずいぶん幼く見えると思ってな。女って化けるよな」

「私は普段もそんなに化粧はしませんよ。そもそも派手な顔の作りしていま……」

いきなり親指で唇を撫でられ、言葉が途切れた。

「今日はルージュを引いていないんだな」

ぷにぷにいじられて、顔に熱が集まってくる。

「固まっていないで、俺の手を払いのけるなり、した方がいいんじゃないか?」

意地悪く笑いながら言われて、パシッと手首を掴んだ。

「い、いきなりすぎて、動揺しただけです! なんなんですか、いったい……」

「もう忘れたか? もっと本気でいくって言ったじゃないか」

「本気だしたら、突然人の顔をいじくりまわすんですか!」

「いや。本気だしたら身体中いじくりまわすだろ」

……やっぱり、この人殴っていいかな。
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