次期社長の溺愛が凄すぎます!
***


食事が終わって藤宮さんにエスコートされながらデッキに出ると、空はすっかり茜色に染まっていた。

沈む夕日を背に、大きなクレーンがシルエットとして並んでいる。

「工場地帯なんてあったかな……」

「いや。コンテナヤードだろう」

藤宮さんの言葉に納得した。ここは空港にも近い海の上だもんね。

たくさんの貨物を運んで、保管して、また運ばれて……か。

眺めていたら、風が吹き付けてきて身を縮める。

コートを着込んできたけれど、夕方の空気はひんやりとしていた。

「けっこう冷たい風が吹いていますねー」

「寒いか?」

「まぁ、少し。でももう少ししたらブリッジ見えてきますよね」

遠くに見えるのはこの都市を象徴するタワーが見えてくる。その脇に、はやくもデートスポットでお馴染みのブリッジが見えてきた。

デッキの手すりに手をかけて、ちょっとだけ身を乗り出す。

「ああ。初めてまともに見ますけど、やっぱり綺麗ですね。デートに見に行くのもわかる気がす……」

背後にあたたかい温もりを感じて、口にしようとした言葉が消えていった。

「あ、あの?」

「このまま抱きしめようか?」

真後ろに藤宮さんが立っている。私を囲い混むように手すりに手をつき、耳もとに囁きかけてくる。
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