次期社長の溺愛が凄すぎます!
「だ、だめに決まってます」

「まだ何も決まっていない」

やめてやめてやめて~! あなたは声も低くていいんだから、耳もとで囁くなんて反則だから!

そんな慌てる思考とは真逆に、身体は硬直してしまって動かない。

こんなに近くに異性がいたことなんてない。体温まで感じるって、今、どういう状況?

自分自身が発熱してるみたいで暑いんですが!


「少し、言い訳をしたい」

ん? 言い訳?

ふとトーンダウンした声音に耳をすませると、藤宮さんは言葉を続ける。


「俺は、全てが終わった瞬間、また君に会いたいと思った」

「私に……?」

「そうだ。いろいろ片がついて、何もかも違う方向へ歩き出そうとした時に、真っ先に思い出したのは君のことだった」

……それはまた、五年前の話だろうか。

「手抜かりがあったのは認めよう。元婚約者の素行や、相手である彼については綿密に調べたのに対し、君はさほど詳細に調べなかった」

「それにしては、よく私を見つけて呼び出しましたね?」

「写真と、よく使う駅は報告されていたからな。ただ、大学の卒業歴までは調べていたんだが……就職した会社までは含まれていなかった。君に関しては、そこまでの情報は必要じゃなかったから」

わかるけど。なんだかひどい言われようだ。

でも、まぁ、私は当時でも、間接的に関わりがあった第三者的な位置だったし、それはそれで納得というか。
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