キミの取り扱い説明書~君が冷たくする理由~

トボトボと一人、帰り道を歩く。
と、そこにコロコロと転がってきたサッカーボール。


「あ、優愛ちゃーん!」


ボールを躊躇いがちに拾うと、
後ろから声が聞こえてきた。


この声は…

視力の悪い私には顔は遠くてよく見えないけど、


「西崎くん…?」


西崎くんだと思われる人は、
私に向かって大きく手を振っていて、
何回か顔の前で手を合わせる素振りを見せた。


ごめん。ってことかな?
このサッカーボールを跳ばしたのは、
西崎くんだったのか。


もう一度西崎くんを見ては、
"私、そんなとこまで跳ばせないよー!"
そうできるだけ大きな声で叫んだつもりだったんだけど、西崎くんには届いていないみたいで、
西崎くんがこっちに来る気配もない。


これは…



私がなんとしてでもあそこまで
蹴飛ばさなきゃならないってことだよね??

できるかなぁ…


そんなことを思っていると。


「あっ」


サッと手からサッカーボールが奪われる。

横を振り向けば、そこには中山くん。


「な、中山くん…あ、あの」


最近まともに話せていなかったせいか、
やたら緊張してしまう。
そういえば、会ったのはあの病院以来だ。


「大丈夫?」


「…えっ?」


どういう意味だろう?わからない。と、
首をかしげて言えば、


「最近、元気なさそうだったから」


確かに、そう言われた。


もしかして…


「心配、してくれたの?」


「…さぁ?」


意地悪そうに言っては、
いたずらっ子みたいにニコッと笑う顔にはやっぱりドキドキしてしまう。


「よっ、と!」


私から奪ったサッカーボールを地面に置くと、
思いっきり遠くにいる西崎くんに向かって蹴った。
そして高く舞い上がったサッカーボールは見事、
西崎くんへと。


「す、凄い!すんごいね!中山く…ん??」


え…



「な、中山くん、どうしたの?!」



彼は頭を抱え座り込み、苦しそうに顔を歪めていた。



「…ね、ねぇ、中山くん!?」


ピクリとも動かない彼に、
どうしたらいいか分からなくて、
とにかく肩を揺すった。


「ねぇ、中山くん!どっか痛いの!?」


そう問いただしても、
彼はただ、首を何回かふるだけ。


「い、痛くないなら…何なの?」
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