キミの取り扱い説明書~君が冷たくする理由~
【 優愛 side 】
「た、助けて…」
誰か、助けて…
やっとのこと、出た声は掠れていた。
人って怖い時には
声が出なくなるって本当だったんだ…。
「残念でした。ここ、どこか知ってる?
空き教室だよ?こんなとこ、誰も来ないし、
通りもしないよ」
クスクス、とバカにしたような笑いを溢す先輩。
「な、何が目的なの!?」
「目的?そんなん、
優愛ちゃんに決まってるでしょ。
優愛ちゃんを手に入れる為なら何だってするよ」
ば、バカなの?この人…
ていうか!
この状況、かなり危険だよね?
だって私、押し倒されてて、
両腕、捕まれてて…
「それに、…琥珀」
「?」
「優愛ちゃんの好きな人、
中山琥珀なんでしょ?」
「な、なんでそれを!?」
「だって優愛ちゃん、
周りの目なんか気にせずコクってるんだもん。
そりゃ知りたくなくても知るよな」
えぇー!!
てことは、その事を全校生徒知ってるってこと?
あ、ありえない!!
穴があったら入りたいってのはまさにこの事!!
「気にくわないんだよね。
優愛ちゃんがアイツのこと想ってるとか」
「優愛ちゃん、
アイツなんかやめて俺にしときなよ。
あんな冷酷人間なんか…」
「な、中山くんはそんな人じゃない!!」
「そうやって
優愛ちゃんに想われてる琥珀は幸せ者だよな。
優愛ちゃんと俺の今の状況、
琥珀が見たらどう思うかな?」
「っ!」
今の、状況…
誤解、される。
絶対、される。
幻滅されるんじゃない?
やっぱこんな奴…って。
もっと嫌われるかも。
それだけは…嫌だ。
この先輩、何を考えてるの?
もしかしてこの先輩…
中山くんと何かあったんじゃ…