キミの取り扱い説明書~君が冷たくする理由~
どこまでも続いていく学校の長い階段を、
スッスッと軽々と登っていく西崎くんに必死に追い付こうとする私だが…

体力がそろそろ限界だと訴えてきている。
私、階段を一気にこんなに登ったこと今までないかもしれないし…

中学卒業以来、部活とか運動をやっていないのだから体力も落ちてきているに決まっている。


「…っね、ねぇッッ!」



階段を登るなまりのように重い足の動きをゆっくりと止めて乱れた息を整える。


「何?どしたの?」


私の呼び掛けに笑顔で振り向いた彼はかなり涼しげ。
その笑顔…眩しいっす。
そんな笑顔で女を落としてきよったのか????(何も知らない)


「アハハハ!何そんな所でへばってんのさ。
ほら、早く!時間なくなっちゃう」


「えぇぇぇー!!!
もう良い!もう良い!
こんな階段登るくらいなら、
ご飯食べずに過ごした方がましだってぇぇえ…」


そんな私の叫びを無視して、
私の腕を掴みさっきよりも登るスピードを速めた西崎くんが今の私には鬼にしか見えないのである。


もう無理~!!と何回叫んだだろうか…
もう声も出ないくらいヤバイ。

あぁーどこまで行くつもりなんだろう。
ていうか、ここ何階?

さっきまで2年の校舎にいたから、
2階から…何回登った?
ダメだ、頭も回んない…~

この学校、無駄に階段多いんだって!!
しかも無駄に校舎キレイだし。
私立でもないのにさぁ。

そんなお金かけるんだったら、
階段じゃなくて、
エスカレーターかエレベーターつけてよね!


と、誰に言ってるのかよくわかんないけど、
とにかくこの学校の文句を心の中で言っていると、


「着いたよ~」


そう言って私の腕をやっとのこと、
離してくれた西崎くんをキッと睨んでやった。


こんなか弱い女の子を
こんな所まで連れてくるなんてなんて奴だ!

せめて連れてくるなら、
君が責任持ってお姫様抱っこでもして階段登ったらいいじゃん!?


…あ、違う違う。
お姫様抱っこなんて…そんなあほな。

こんな西崎くんなんかに…
初お姫様抱っこ奪われてたまるもんですか!!


「何気、失礼なこと言ってくれちゃってるね。
優愛ちゃん?」


ひぃぃぃ!!
優愛ちゃん?って笑ってる西崎くんだけど…
目、笑ってないよ!!?
…恐ろしい。恐ろしい。


「てか、また心読まれた!?
西崎くんもエスパーなの!?」


さっき穂希にも当てられたし…
ひょっとして、ひょっとしなくても、
この学校の生徒は何かしら不思議な力があるのかしら。


「ひょっとしなくてもそんな事ありえないから!」


「わっ!!また読まれた!?」


やめてー!!これ以上私の思考読まないでぇ!!


「あのね。
優愛ちゃんの思考を読んでるんじゃなくて、
優愛ちゃん自身がそう叫んでるんでしょ」


なんですと。
私が叫んでる?


つまり…


「私は心の中で言ってるつもりが、
口に出ている、と…?」


「そういうこと」



「な、なんだぁ!ビックリしたなぁ!
もう!!もっと分かりやすく最初っから説明してくれたらよかったのにぃ」


そう言いながらバシバシと
勢いよく西崎くんの肩を叩く。

だって最初から説明してくれさえすれば、
こんな考えたりしなくてもすんだわけじゃん?

ただでさえ頭悪くて普通のこと考えるだけでも疲れちゃうんだから…変なことで頭使いたくないよー。


「いやぁ…確かにそうだけど。
優愛ちゃんのお喋りが絶えなかったから…
って聞いてないか(笑)」


そんな事を言っている西崎くんのことも
勿論、知る訳もなく…。


「…ねぇ」


ゾワッ!!

いきなり背後から誰かに話しかけられる。

一気にサーっと血の気が…!!
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