キミの取り扱い説明書~君が冷たくする理由~
"ねぇ"という声が聞こえる。
が、その声が誰か分かった途端、
体がカチンコチンに固まってしまった。
「へぇ~無視ですか?いい度胸してんね」
彼は満面の笑みを溢す。
そう、彼が私の想い人であり、校内一のイケメン、
中山琥珀くんである。
なぜか人呼んで、
white Prince(ホワイトプリンス)らしいが。。
この人を…悪魔とよばず何と呼ぶ!
と私は思うわけですよ。
「め、滅相もございませんがな!」
あなたの声があまりにも透き通った綺麗な声なもんだから聞き入ってしまったのですよ。…
とは悔しいから言ってやんない。
「どーでもいいわ」
「ガーンッ!!」
「ちょっと。心の声は心の中だけで言ってくれない?」
"どーでもいいわ"
どーでもいい。どーでもいい…どーでもい、い…。
つまり、私のことなんてどーでもいい。
お前の話なんて興味ない。
そういうことですか!?
この人、white Princeなんかじゃないよ!
皆、変な誤解してるよ!
whiteじゃなくてblack!!
"black Prince"(ブラックプリンス)だよ~‼
ていうか
「な、中山くんがなぜこんな所にいるのでしょうか。
というかここ、屋上だよね?」
学校の屋上は普段封鎖されていて鍵を先生から貰わないと開けられないはず。
もちろん、私は今まで屋上に来たことがない。
今日、今が初めてだ。
「ここ、俺らの秘密の隠れスポットなんだよ」
今まで存在感を消していた西崎くんが、
ひょこっと私と中山くんの間に割り込みニッコリと笑って言った。
「隠れスポット?」
「うん。ここ、誰も来ないし、
変な心配しなくてもいいっしょ。
お昼食べたりサボったりするのに
もってこいの場所なんだよ」
ふむふむ。
なるほど、つまり君達は…
「二人とも女子ーズから逃げているのか」
「ま、簡単に言えばそういうことだよね」
「ほーモテる男は大変ですなぁ」
「ほんとほんと。ただでさえ俺モテるのに、
琥珀なんかといたら…シャレになんないんだよ(笑)」
「うっせーなー」
ヘラッと冗談っぽく笑って言う西崎くんの頭を
ペシッと叩き、ギロッと睨み付ける中山くん。
「というか、お二人さん。仲良かったんだね?!」
仲良し?イチャイチャ?
してる二人を見ていて何だか幸せな気分になる。
かなり意外だ。
中山くんは、クール&スパイシーで。
西崎くんは…ごめんだけど。女遊び酷そう…。
二人とも、正反対だ。
「別に仲良くなんかないし」
そう照れたように俯き、
憎まれ口を叩く中山くんに
「おいおい。そんなツレないこと言うなよなぁ。
親友さん♪♪」
くっつき虫の西崎くん。
何かを言い合って、じゃれあって、
お互い目を見て笑いあってる。
この二人、普通に並んでたらかなり良い絵になるよ。
「フフフッ」
そんな二人を見ていたら
なぜだか自然とこっちも笑顔になる。
「あっ!!!」
私の大声にビクッ!と
一瞬肩を揺らした中山くんと西崎くん。
「びっ、くりした。いきなり叫ぶなよ。
心臓に悪い」
そう言って私を睨み付ける中山くんだけど…
ハッキリ言って、そんなの逆効果ですよ。
残念でしたね、中山くん。
そんな睨み、私には痛くも痒くもないのだよ。
あ、でも。
ヒットポイントが24くらいupしたかも。
「ご、ごめん…(笑)
あ、あのね。今日も一緒に帰れる?」
この前誘ったら意外にあっさりOKくれたし、
今日も普通に誘えばあっさりOK…
「無理」
…してくれませんでしたぁぁぁ
「なんでぇ!!!!」
どうして!?
何か用事でもあるわけ!?
この前はあっさりOKしてくれたじゃんかぁ。
なのに今日は即答…アリエッティー。
こんな可愛い女の子に誘ってもらってるんだから黙ってOKしてればいいものを。
「心の声、マジでうざいんだけど。
一緒に帰るとか。そんなの、俺の気分だから」
「気分!?」
あ、
あ、
「…悪魔だ」
そう小さな声で、
ほんっとに誰にも聞こえない声で呟いたその言葉も
「誰が悪魔だって?」
悪魔には聞こえてしまうのです…。
誰か、
このどうしようもない悪魔をどうにかしてください。
そして…
「中山琥珀!早く私におちろー!!」
大声でそう叫んで、
屋上飛び出した。
だから知らなかったんだ。
彼が…
中山くんが少しだけ切なそうな顔をしていた事を…。