佐野くんっ…!!
「急に頼んじゃってごめんね〜」


「いいのいいの!そんな事よりかなり短く切っちゃったけど、美怜ちゃん大丈夫なの?」


「大丈夫よ〜、もっとバッサリいっても良かったくらい」


「そーなの?なら良かったけど…」


「じゃあまた予約するわね」


「待ってます!ありがとうございました〜」



車の外。

お母さんと美容師さんの会話が窓ガラス越しに聞こえてくる。



バンッ



勢いよくドアを開け、お母さんが乗り込み、エンジンをかける。



「帰ろうか」


「…うん」





私は帰りの車の中で何だかじっとしていられない気分になった。

生まれて初めてこんなに短く髪の毛を切った、というのが一番の原因だろう。



手持ち鏡の中の私はまるで私じゃないようなーーー



まるで、別人のようだった。


< 21 / 117 >

この作品をシェア

pagetop