佐野くんっ…!!
私は何の話をされているのかもわからないまま、輪の中心に置かれ、とても心寂しかった。


と、その時ーーー



「悪ぃけど、ちょっと借りるわ」


「…え?」



私は後から着た子に腕を掴まれ、お弁当を片手にしたまま、どこかしらへ引っ張られていった。


あまりに一瞬の出来事だったため、自分の身に何が起きたのか把握出来ない。



「お、おい!取ってくなよ〜!」


「後でちゃんと俺らに返すんだぞ!」



みるみる離れていく教室から、さっき私の周りにいたクラスメイトの声が聞こえる。



「わかったな、佐野!」


「……………っ!?!?」



私は一瞬、耳を疑った。


今確かに、“佐野”ってーーー



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