佐野くんっ…!!
ポタポタと髪から水滴を垂らしながらやってきた彼は、私の方を見るとニコッと微笑んだ。



まるで、あの時のことを無かったかのようにする笑顔ーーー



気まずい、そう感じた私はなるべく三井くんの方を見ないようにして、真っ直ぐ前を見つめた。

三井くんは、ふーうっ、と大きく息を吸ったり吐いたり。





…何なんだ、この人は





気が散る。

チラッと横目で彼を見た時、たまたまーーーなのかどうなのか、バチッと視線が交わってしまった。


私は慌てて目を逸らした。
が、
三井くんはクスッと笑うと、



「逃げないで」



グイッ…



「……っ!!」


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