放課後は君と2人で




夏休みが明けてから“テスト”や“始業式”などがあって何かと忙しかった毎日なので、今までゆっくり話をする時間がなかった。


だから色々聞きたい事があったんだよね。


「ねえ、どんな感じの人?」


「どんなって……。

とっても、優しいよ」


「もっと詳しく教えてよっ!」


「うーん……。

背は結構高くて、手先が器用……。
あと、タコさん」


梓は“タコさん―――”とニコッと嬉しそうに笑った。


背が高くて。
器用で。
タコさん―――。


一体どんな人なんだ!

今の話を聞いただけでは想像がつかない。


だってタコさんだよ!
タコさん!


真っ赤で足が8本…… って事?


それって最早人間じゃないよ。


「梓、その人って大丈夫?」


「大丈夫だよ。
藤はあたしにとって大事な大事な……。

“月のような存在”だから」


“月のような存在―――”



この時の梓は首から下げている指輪を優しく指で撫でながらとても愛しそうに見つめていた。





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