私の運命、変えてみせます!
地面に足が着いたという感覚が戻ってきたのはしばらくしてからで、その間もずっとノワールから離れることが出来なかった。
彼以外のこんな見知らぬ男性に、こんな密着するなど生まれての初めての経験だがうるさい心臓を抑えるためには誰かの温もりを感じなければいけないと本能がそう言っているような気がした。
密着している間、あれだけ賑やかなはずのノワールはただ黙って背中を摩っていた。
落ち着いた心臓の音を感じ、そっとノワールから離れるとまたしても顔を覗かれる。
『落ち着いた?』
「ええ……まあ」
『これで少しは信じてくれたかい?』
「……もう一度聞くけど、ここは一体どこなの?」
ハッキリとした答えはもう聞いているけれど、落ち着いた今ならその答えを真実として受け止められる、そう思って同じ質問を投げた。
返ってくる答えも一緒、だからこそもう一度聞く。
『君の住む世界とは違う、おかしな世界。ようこそ異世界へ』
「異世界……」
『ふふふ、そうやって驚かない所、本当にいい。骨のあるお嬢さんに仕事をさせて貰えるなんて、俺もついてる』
顔を除きながら嬉しそうな表情を浮かべるノワールの高い鼻を、摘んでやった。