私の運命、変えてみせます!
辛い悲しい現実から目を背けたいが故に、自分の心を消したかった。
人という生き物はやっぱり脆くて、それゆえ自己中心的だ。
ふわりと風が私の髪を弄ぶようになびかせた。
「ねえ、ノワール」
賑わう人の中で、ノワールを呼ぶ。
いつの間にか仮面を再び付けていたノワールの表情は、読めなくなっていた。
「あの、さ」
願いって一つ叶えてもらったら、もうこの世界とはお別れしなきゃダメなの?
そう聞こうとしたが、その前にノワールが私の手を力強く引いた。
すぽりとノワールの胸の中に飛び込む形になり、思わず息を飲む。
どうしたものかと身を強ばらせていると、ざわめきが起こる。
振り向いて確認しようとすると、上から押し付けられるような強い風が吹き抜けたかと思えば、さっきまで私が歩いていた場所に絵本やテレビアニメでしか見た事のない生き物がそこへ降り立っていた。
「ドッ……!!!」
『お嬢さんは、見るの初めてか。あれは飼い慣らされたドラゴンで、ああやって荷物を配達しにくるんだ。にしても……まだ新米だな。こんな大通りに来るとは、まだまだな様子だな』
私の身長の倍はあるだろう、その体の綺麗な緑色の鱗が太陽の光を浴びると、微かに青へとその色を変える。
大きな翼を綺麗に畳むと、その背から縄はしごを下ろすように体を小さく左右に揺らした。